少女は産まれた瞬間から世界を知っていた。 普通のヒトと同じ様に産まれ落ちておきながら。 人々は恐れた。 何れこの少女が災いを齎すのでは無いかと。 中には少女を神格化する者も居たが多くの人にとってこの少女は災厄でしか無かった。 生まれ持っての強大過ぎる魔力 、 総てを見透かす様な瞳。 災厄を招く少女を人々は何も出来ぬ内に始末しようと、手を掛けようとした。 然し其れが出来なかった。 世界が其れを許さぬと言うのか。 少女には幾重もの魔法による障壁が張られていた。これでは少女を葬る事が出来ない。 ありとあらゆる手を尽くして人々は少女を潰そうとした。 然し如何なる手段を用いようと其の障壁はどうしようもなく。 故に少女はこう呼ばれた。 "怪物"と。 名前は与えられていない。 怪物に名前等必要ないと。 物心つく頃には無意識の内他人の悪意に慣れてしまっていた。 時には石を投げつけられる事も槍を投げられる事もあった。 けれど少女は其れを唯悲しげに見詰めるだけで何もしない。 いつの日か少女は姿を消し一時の安寧が人々を包んだ。 だが 、 何処で知ったのか。 其の力を悪用しようとする輩が現れるまでそうかからなかった。 少女を捕らえようとする者、洗脳しようとする者、様々な人間が居たが其の何れもが返り討ちにあっている。 遂には様々な兵器を向けられる。 然し其のどれもが少女に届かない。 其の内少女は諦めた。 人々と和解する事を。 故に強烈な代償と引き換えに力の一端を与える"契約"を好奇心からか行う事にした。 代償を払ってまで叶えたい願いを。 想いを知りたかった。 己の本来の性格を封じ 、 そうして少女は悠久の時を彷徨う。
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